「昨年を無事過ごせた事を祝し、今年一年の無事を祈って・・・」

 『乾杯ッ!!』




新年会〜蟹と豆と時々親バカ〜




 ――元旦。
 新年初のおめでたいこの日、各國の名武将等は相模の小田原城を会場として盛大な大新年会を催した。
 西は島津義弘から東は一揆衆頭領・いつきまで、とにかくお祭り騒ぎが大好きな人達がこぞって参加し、此処小田原城に終結した。
 まぁ当然の如く、そんな人達ばかりが集まった宴会が『普通の宴会』で留まる筈が無く――――

「ガハハハハッ!!ちっこいの、お前さんも飲みんしゃい!!旨かよ〜」
「おら酒は飲まないべ」
「伊達殿!!どちらが早くこの皿を空けるかで勝負でござるッ!」
「Ha!!上等だァ真田幸村ァア!!」
「ちょ・・・おい元就!それ俺のだから!俺の蟹だから返せ!!」
「莫迦は寝て言え、この蟹は我のぞ」
「幸村!この信玄が見ておるぞッ!!」
「あいかわらず、りゅうととらのわかごはなかがよいですね」
「みてみて信長さま〜、ホラ!上手くむけましたよ」

 ――――酔っ払い、早食い勝負、乱闘、傍観、和み・・・・・・等々。最早会場は、ある種の修羅混沌の世界へと化していた。
 その中で唯一の救いは、第六天魔王・織田信長が乱闘に参戦していない事ぐらいだろうか・・・。
 ちなみに幸村と政宗の早食い対象は餅。あまりお勧めできません。


 その喧騒から少し離れた壁際で、ちびちびと蟹を食べている少女が一人。
 名をといい、今現在武田軍にて居候中。色々と特殊能力もとい技能があるが、自前の怪力だけでも戦国最強の武将と謳われる本多忠勝といい勝負が出来るとか出来ないとか・・・十三歳のとっても強い女の子。
 只今彼女は諸々の理由で名を””、性別を”男”と偽っている。(BASARA連載『咎負いと愉快な仲間達』其の参を参照)
「おーい・・・・・ってお前まだその蟹食ってたのか」
「ん。身がね、なかなか取れない」
 の傍に寄ってきた、もとい、避難してきた前田慶次は、半刻程前から食べ始めていた筈の蟹が未だ半分程度しか減っていない事に、思わず驚きと呆れが混合したような笑みを漏らす。
 それに対して少女の方は些か真面目顔で蟹との奮闘に勤しんでおり、慶次への返答も声だけで顔は蟹から逸らす事は無かった。

 ホリホリ

 ホリホリホリ

 ホリホリホリホリ・・・・

「・・・お前魚食うのは上手いのに、蟹は全然だな」
「・・・・んん・・・・」

「ハイ、とりあえずこっち食べてなさい」

 その見知った声がしたと同時にの目の前に現れたのは、豆の醤油漬け。しかも結構な量である。
 はパァと目を輝かせ、すぐさま蟹を放っぽり、豆の醤油漬けの大皿を受け取った。
 蟹の時と同様ちまちまと一粒ずつ豆を口に運んでいるが、その速度は桁違いに速かった。
「へぇ、アイツって蟹より豆の方が好きなのか。結構安いのな」
「まぁまぁそう言わないであげてよ、風来坊の旦那。はまだまだ子供なんだからさ」

 ホリホリ

「・・・それでアンタは堂々とアイツの蟹を横取りかい?真田の忍さん」
 に豆を渡した張本人である猿飛佐助は、彼女が放っぽった蟹の身を丁寧に取り出している真っ最中。
「やっだな〜。俺様がそんなセコイ事するわけないでしょ」
「いや、現に今蟹の身取ってるし」
 否定されても蟹の身取りながらでは説得力は皆無である。
「俺様がに豆をあげたのは蟹の身取りの時間を稼ぐ為で、取った身はちゃんとあの子に・・・・って、何つまみ食いしてんのさ」
「えー、いいじゃん別に。この蟹でかいんだし・・・・・ってかこれ、アイツ一人じゃ明らかに無理あるだろ」
「・・・・・確かに。俺等の蟹より二周りは軽くでかい」

・・・・

「「北条のじいさんの仕業か」」

 佐助と慶次の声が見事にハモった。

 この膳を準備したのは会場提供者である小田原城主・北条氏政その人である。
 あの翁の事だ。普段から孫のように可愛がっているに喜んで貰おうと『一番良い物はの膳に使うのじゃっ!!』とでも女中達に指示したのだろう。
 実際、その場面を難なく想像出来てしまう辺り、この仮説が最も有力であることは明白である。 
「全く何考えてるんかね。いくら良くてでかくても、あの子が食べ切れなきゃ意味ないでしょうに」
「あっ、何かその台詞って『同居してる爺ちゃんが子供に勝手にお菓子あげたを夫に愚痴ってる嫁』みたいだな」
「それって暗に俺様の事『おかん』って言ってない?しかも何?その具体的過ぎる例え」
 氏政の懇胆に呆れて愚痴り始めた佐助に、慶次はとびっきりの笑顔で核爆弾を投下した。
 爆弾を落とされた佐助は慶次に勝るとも劣らない笑顔を浮かべ、背後にドス黒いオーラを携えている。ついでに目は笑っていなかった。
 佐助の文句を聞いている慶次の笑顔から血の気が引き始めたまさにその時――――

「成程・・・『親バカ』という事か」

 ズザザザザザァ―――――ッ!!!!

 突然彼等の真上の天井から、しかも何処と無く勝ち誇った感がある小さな声が降ってきたのだ。あまりの突発的な出来事に、忍が本職の筈の佐助も慶次と一緒になって思いっ切り後ずさる。
 しかし持っていたの蟹は意地でも落とさなかった辺り、流石おかん。

 天井から軽やかに降り立った人物は、北条軍忍頭・風魔小太郎であった。
「構い過ぎは・・・悪影響だ。折角の才が潰れる」
「・・・・・・・・ふぅ〜ん。アンタの意見は一応聞いておくけど、ウチの教育方針にケチつけないでくれる?」
「既に我が子扱いか・・・・。いつから・・・武田の子になった?孤児という話だった筈だが?」

 バチバチバチ

 忍二人は何時の間にか、火花を散らしながら自分達の教育論について熱く討論していた。
「ハァ、結局はどっちも『親バカ』じゃん。なぁ、お前もそう思うだろ?」
「慶次、『親バカ』って・・・・・・結局何?」
「ん?あそこで火花散らしてる二人の事だぞ。一応念の為覚えとけ」
「ん、分かった」
 その討論(戦闘)?を尻目にと慶次は、佐助が取り出してくれた蟹の身を仲良く頬張りながら、堂々と傍観を決め込んでいた。
 彼らの勝敗が着かず仕舞いの引き分けになったのは、討論(戦闘)開始から約三刻程(約6時間)たった頃だったとか。







†反省会†

想定外の事故で、ものっそいUPするの遅れました。
申し訳ないです・・・・・。

今年も『蒼天なる空の此方へ』と真録 理を宜しくお願いします。



(最新加筆修正:08.09.20)