少女は夢を見た

 優しい、優しい夢を見た

 だから今は・・・

 もう少女は夢など見ない




其の九・優しい時間〜何かの前触れ〜




 程よい暖かさの日差しと涼やかな風が、初夏の季節を伝え巡る。


 上田城の一室。木漏れ日が差し込むとある書院造の和室に、一人の童が静かに眠りについていた。
 その隣では、青い髪と紺色を基調とした異国情緒溢れる服装を身に纏う青年が、小さな白い花を花瓶に生けている。
 ふと、青年は視線を眠っている童に向ける。
 童の表情は前髪によって目が隠れてしまっていて、穏やかなのか、苦しげなのかもイマイチ見当がつかなかった。が、一向に目覚める気配が無いのは確かだった。


 童は眠る。
 ただひたすらに、その傷ついた身体をまどろみに沈めて・・・。  

 それは、まるで夢のように優しい光景だった。



†・‡・†



 童――)が寝ている部屋の隣では上田城主・真田幸村をはじめ、武田信玄、伊達政宗、片倉小十郎―――そして四人と向かい合う玄武が険悪な雰囲気の中茶を啜っていた。


 今日でが寝込んで早四日が経つ。
 その間に、という事で急遽設けられたこの会談。本来なら向こう側には朱雀も出席する筈だったのだが、彼女はの看病に付っきりだ。その為此処には会談相手が玄武しかいない。
 相手が玄武だけだからなのか・・・丸四日経とうというのに話は一向に進展せず、険悪な空気ばかりが募ってゆく。特に自称の兄・幸村と直接玄武にボコられた政宗はそろそろ限界が近―――
「いい加減にしろ!何時まで押し黙っているつもりなのだ!?」
「Me too!Once this boy was a painful experience no harm and do not know.(同感だ!このガキャア一度痛い目に遭わねぇーと分かんねーみたいだからなァ)」

 否、すでに限界突破していた。

「じゃかしーわ!こんのボケ犬猫がぁあっ!!こちとら己等に喋るモンなんざねーしあってもそんな気ぃ更々ねぇーんじゃボケg――ぃだっ!!?」
「――何時までそんな事を言っているつもりだ?玄武」 
 玄武が売り言葉に買い言葉を返し―――切る寸前、彼の後頭部に衝撃が走る。突然の事に玄武は思わず声を出し、受身も何も取らずそのまま前のめりに倒れた。
 玄武の後頭部に拳を落としたのは、見た事も招いた事もない大柄の男だった。
 髪は短い白髪、瞳は金。額には額金を巻き、大陸風の黒甲冑に身を包んだ、見るからに壮健な男だ。
 これには先程まで玄武に文句を怒鳴りつけていた幸村や政宗、更には大人の態度で傍観していた信玄と小十郎の保護者組も驚きを隠せない。
「何すんじゃワレ!ぁあッ、白虎!」
「口が悪いぞ、玄武。また主殿に窘められたいのか」
 ぐっ、と玄武が声を詰まらせる。
 それほどまでにに嗜まれるのが嫌なのか、まるで大火事が突然のどしゃ降りで一気に鎮火したかのようにしおらしくなった。

 くるっ―――
 音も無駄な動きも無く、白虎と呼ばれた男は玄武を除いた四人の方へと振り向く。
「玄武が失礼をしたな。何分、この玄武は我等の中では一番幼い。故に子供の戯言ととってもらえるとありがたいのだが」
 白虎がこう言っている最中にも 「誰がガキじゃ誰がぁあッッ!!」 と玄武がボコスカと白虎を殴る。しかし効果が無いのか、白虎は平然とした顔をしたままだ。
 暫くして、白虎が溜息を一つ零す。そして、背後で未だにボコスカやっている玄武の首根っこを引っつかんで空中でぶらつかした。

 丁度――その時だった。 

「――失礼します」
 赤と白を基調とした――が見れば米国原住民族衣装のようであると答えただろう――これまた、異国風の服装を身に纏い、紅い羽飾りが付いたバンダナをした少女が障子を開けた。
「ハァ・・・・・・何やってるの―――玄武」
「オレ限定かよ!?白虎はッ!?」
「白虎は子供じゃないでしょ」

「はいはい、そこまでね玄武くん。新しいお茶冷めちゃうんだけど」

 新しい声が天井から降ってきたと玄武が認識するや否や、また誰かに首根っこを掴まれ、強引にあてがわれていた座布団の上に座らされる。
 十二分に血が上った状態の頭で抗議しようとするも、玄武が声を発する前に、何時の間にか目の前にはお茶と茶菓子が置かれていた。それどころか、部屋に居た全員の前にそれらは置かれていたのだ。
「・・・・・佐助、お前すごいな・・・・・・」
 あまりの早業に、思わず幸村は感嘆の声を上げる。
「そう?じゃあ給料上げてよ旦那」
「ダメだ」
 場の流れに乗じて佐助は賃金上げを試みるも、あっさりと却下された。



「あ。そうそう、伊達さん」
「Ah?俺に何か用かいRed Leddy?」
「はい。貴方に可愛らしいお客さんが来てらっしゃいますよ」
 綺麗に笑いながら、朱雀は障子の方へと視線を促す。
 暫くすると、どたどたと慌しい足音と共に――

「青の兄ちゃん、やっとこさ見つけたべよ!」
 
 俵ほどの大きさの大槌を担いだ、小柄な少女が現れた。
「い、いつき!?おま・・・・・・何で甲斐に居るんだよ!」
「兄ちゃんとこ米届けに行ったら兄ちゃん此処に世話になってるって言うし、だから米さこっちにも持って来たんだべ!」
 と胸を張って言ういつきに対し、政宗はイライラした様子で周りの面子――特に玄武を睨み付ける。
「やーいロリコーン♪」
「よし。お前今すぐKillしてやるよ」
「ハッ!逆に返り討ちにして・・・・・・?」
 政宗に吐かれていた玄武の毒が、不自然に途切れる。
 玄武はしばし固まったまま、静かに朱雀の方へと首を動かす。
 そして―――

「―――ちょっと待て。朱雀が此処に居るってことは―――今・・・・・・アイツの傍に誰かいるのか?」

 その一言に、残りの守護聖獣と佐助、事情を知らぬいつき以外の者達が一斉にその表情を硬くする。
 ――そう。の看病は朱雀に一任されていた。
 その彼女がこの部屋に居るという事は、が一人きりで居るという証明に他ならない。
 ――が、
「ああ、それなら心配いりませんよ」
 と、あまりにもあっさりとした回答が返ってきた。
 しかし――

「青龍が傍に居ますから」

 そう続けられた言葉に、玄武は血相を変えて部屋を飛び出そうとしたところ、その行く手を白虎に阻まれた。
「退けよ白虎」
「頭に血が上っている間は、行かせられんな」
 白虎の正論過ぎる言葉に、玄武は言い返す事が出来ない。
 小さく舌打ちをし、精一杯の意地を込めて白虎を睨み付ける事しか玄武には出来なかった。

「――・・・・・・何時も、そうだ・・・・・・――」

 ぽつり。
 緑の少年は歳相応の顔でその場にしゃがみこんだ。

「・・・・・・」
「何時も何時も・・・・・・青龍ばっか・・・・・・」

 幼子は呟く、呟く・・・、呟く・・・・・・。
 とても悔しそうに。
 とても、歯痒そうに――。
 


「ねえ、朱雀ちゃん」
「?何ですか猿飛さん?」
「『青龍』って何者?」
 佐助が武田・伊達の双方を代表して(幸村はあがってしまって使い物にならず、政宗は時折異国語使うので分かりづらく、信玄と小十郎は保護者兼お目付け役なので)一番話し易そうな朱雀に問いかける。
 その当然ともいえる問いかけに、ああ、と朱雀は納得する。
「青龍は『静寂』と『心守(しんしゅ)』を司る『東神』です。普段から口数少なくて、彼が何考えてるかなんて主様ぐらいしか分かりませんよ」
「それで、何故玄武と仲が悪いのだ?仲間なのであろう?」
 朱雀の答えに間髪入れず、幸村が本題を問いかける。
「簡単です」 

「主様が初めてその身に刻み付けた神が―――彼、青龍なんですよ」





目次・→



[反省会]

ご無沙汰してまーす。アホの子筆頭の理でーす。
あははは、どんだけ期間空いたんだこれー(乾笑。
物語の半分も行ってないと感じているのは理だけでしょうかね(そんな事はない。

最近ですが、自分の文章の書き方が現在読んでる小説によって大きく変わる事に気が付きましたよ(激しく如何でも良い。
お陰で文章の形式が統一できません!(人の所為にするな。


辛うじていつきちゃんが出せたので、次は多分あのお方が出てくると思います。