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父が望んだ 祖父が望んだ 祖先が望んだ 我等が救わねばならぬのだと 誰かが望んだ だからという訳では無いが、 やはり……それを目にしてしまった今は――― 『救わねば』という思いしか湧き上がらなかった…… 其の十二・侵入、幕間、手紙〜大義の智将〜 「―――いない……だと?」 元就が静かに応える。 表情こそ普段と変わりないが、その目の奥に潜んでいるのは紛れもない怒りと憤り……そして、侮蔑。 こんなことすら満足に出来ないのか、と言わんばかり主の視線に耐えながら、忍び頭は言葉を返す。 「……はい」 と、至らぬ己を認めてしまう言葉を――― 「城内の隅々まで侵入、捜索しましたが……元就様が仰るような容姿の娘は、その、残念ながら……」 所々言い淀みながら報告をする忍び頭。その内容を聞くうち、元就の眉間に刻まれたシワが増えていった。 「――……もうよい。下がれ。我自ら、虎に問い質す」 「!? しかしそれでは…!」 「我の声が聞こえぬか? 二度言わねば動かぬほど、貴様は無能なのか? ならばこの場で切り捨てても良いのだぞ。―――使えぬ駒など、我には不要だ」 主である元就の身を案じる忍び頭の言葉は、当人である元就自身の苦言によって遮られてしまった。 これ以上、きっと何を言っても元就の機嫌を損ねるだけだ。 「はいはーい、そこまでですよーお客さん」 不意に、その場にそぐわぬひょうきんな声音が響いた。 とっさに、毛利の忍びらが腰の忍刀を引き抜こうとする。――が、それは自分達と同じく闇に溶け込む色であり、それでいて違う色に染まっている者達によって阻まれてしまう。 ――真田十勇士。 それが……毛利の闇を抑え込む、彼の者達の総称。 ほの暗い深闇の一角を担う集団。轟々と力強く猛る護摩檀の炎が生む陰。 それが――彼らだった。 自らの駒が拘束されたと瞬時に判断すると、元就は潔く武器を捨て、静かに天井裏からぶら下がっている青年を睨み付ける。 元就の殺気伴う視線を向けられた青年――佐助は、ニヘラ、となんとも子供じみた、わざとらしい笑顔で応えた。 元就が鼻で笑う。 「流石は真田の駒……報告以上には有能のようだな」 「いや〜俺様照れちゃうな〜……って、まぁ、そんな場合でもないんだよね。こっちはさ」 「ほう……奇遇だな。我もだ。貴様の馬鹿話を聴いてやる暇なぞ無い」 「狙いは――いや、『咎負い』ってところかな?」 『咎負い』――その言葉に、たった一人の少女が為の言葉をキッカケに、元就の纏う空気が変わった。 元々穏やかな空気ではなかったが、それ以上に怒りやら何やらの色が濃くなった。 「……ほう、毛利の者でもない貴様が、その言葉を口にするのか。――知っていたのは甲斐の虎か? まさか……真田や伊達と言うわけでもなかろう?」 「あのさ、悪いんだけど…質問したいのこっちなんだよね。 ――何故『咎負い』を狙う?」 鋭く冷たい眼光と共に佐助が囁く。 周囲一帯の空気の温度が、ガクンと下がったのが肌で感じられた。 そんな中――― 元就が眉をハの字に曲げ、心底馬鹿にしたように嘲笑ってみせた。 「貴様なんぞに用はない。さっさと『咎負い』を出せ。 ―――『咎負い』を守る権利は、我が毛利家にある! 大義があるのは我の方ぞ!」 「――そうか。……のう、毛利よ。少し話でもせんか?」 突然聞こえてきた返事に、元就は此処に来て初めて――気後れしてしまった。 †・‡・† 城主の主君・武田信玄に客間に通された元就は、障子戸が開け放たれるや否や、盛大に眉間にシワを寄せ、怒りで目を力任せに細めた。 そこには――― 「よっ、元就。無事でまぁ良かっ―― 「死ねッッ!!」 ――あっぶねぇぇーよオイ! は!? ちょ、ナリちゃん何してんのねぇええ!?!?」 何故か、茶ぁかっくらいながら胡座かいて寛いでいる同盟相手がいた。 「バッカ野郎! 輪刀投げんな! 俺が死ぬだろぉーがっ!」 「馬鹿は貴様だ! そのために投げておるのが分からんかこの馬鹿チカめッ!」 お互いに貶しあい、罵倒しあい、凶器を投げ合う。正直言って、幸村と政宗の決闘よりある意味酷い状況だ。 遠い目をしながら、一見優しく聞こえる声音――勿論、彼らに対する優しさなんて含まれていない――で佐助が話を進める。 「あのさー、大将との事話しに来たんじゃないの?」 「……チッ、馬鹿チカの所為で時間を無駄にした」 「まだ言うか! ――……あん? 『』? 誰だそれ?」 心底分からないといった表情で、元親は佐助に目線を向ける。 その反応に、佐助は一気に萎えてしまった。 「……アンタ、一体何しに来たのさ……」 「フン、使えん男だ」 「お前が一切説明しねぇーからだろぉーがぁああーーッ!」 ――そりゃそうだ。 「落ち着かんか、長曽我部」 暴れ出そうとする元親を諫める信玄。 年の功か、はたまたその威厳に満ちた貫禄の所為かは分からぬが、元親はしばらく信玄の顔を睨み付けると、面白くなさそうに渋々その場に座り直した。 「…で、誰なんだよ、その『』ってのは」 「うむ。『』とはな、『咎負い』の童の名だ」 「『とがおい』?」 信玄の話を聞いてもいまいちピンとこなかった元親だったが、一息置いて、 ―――ああ、元就が言ってたヤツか。 ようやく、納得したように下がり気味だった頭を持ち上げた。 ――しかし、それも束の間。 「ちょっと待てよ……オイ、元就。 ――お前が捜してんのは『藍紫の髪の童女』じゃなかったのかよ」 元親の発言に、佐助が見事に固まる。 「……え? ちょ――」 そして佐助が自分のテンパり具合を表現し切るその前に――― 「長曽我部元親ぁああーーーッ!!」 ――グガシャッ! と部屋の障子戸を蹴破って完全武装した幸村が元親に突っ込んできた。 「そのような戯れ言でお館様を欺こうとは笑止千万! ――さぁ、武器を構えられよ! この真田幸村がお相手いたす!」 「へっ、言うじゃねーか赤けぇの! だが、ちぃーとばかし頭の方が足んねぇーみたいだな」 槍を突きつけてくる幸村に対し、元親 まさに売り言葉に買い言葉。 元親は不適な笑みを浮かべ、肩慣らしとばかりに左肩をグイグイ回す。 「――いいぜ、来いよ。この『西海の鬼』長曽我部元親が相手してやるぜ!」 「「うおぉぉおーーーッ!!」」 「止めんかッ!! こっのバッカモン共ッ!!」 ――ビリリィィッ!! 一瞬間、大虎の如き咆哮が空間を振動させ、圧迫する。ガタガタッと障子戸や襖が揺れる中、人だけが時間が止まったのように硬直した。 「し……しかしお館様、は立派な男子で……」 「いや、あれは童女だ。――この書状を見よ」 幸村の反論をピシャリと断ち切り、信玄は一通の手紙を広げて見せる。 そこには――― 「これは…!」 「うむ。 ――上杉からの書状じゃ。あの娘は今、越後におる」 の安否と、今は決して会えないとだけ書かれていた。 |
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ども。だいぶ久しぶりな更新ですぜ!な理です。こんにちはー。
前回の反省会でも言ってたとおりオクラ様のご登場でございます。
個人的にオクラ様は匡房さん似だといいなー。
ちなみに、大江匡房さんはウィキで適当に調べて適当に理の妄想フィルターがかけられているので、実在の人物とは全くの別物とお考え下さい。スゲー今更ですみません。
……しっかし、一体何時になったらコタを出せるのやら……(ボソ。
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