昔々、とある場所に母と子が暮らしていました

 ある日、母は子にこう言いました


『誰もが争わず、血を流して苦しむ事無く、傷つけ合う事無く平穏に暮らせたらいいのにね・・・・』


 それに子はこう応えました


『何時か私が、母上の願いを叶えてみせる』


 と――――・・・・




其の伍・双竜との出会い〜南北聖獣ノ乱〜




 )は躑躅ヶ崎館を無事脱出すると、己が背より朱雀を発現させ、その背に素早く飛び乗る。
 紅蓮の炎を纏った美しい怪鳥は、主人が乗った事を軽く確認するとすぐさま地上から飛び上がった。


 暫く飛行していると、は朱雀の背に蹲るように・・・・・・嗚咽を漏らし泣いていた。子羊のように小刻みに体を震わせ、絶えず 「ごめん、ごめんなさい・・・っ」 謝罪の言葉を繰り返すばかり。
 そんな彼女の背には、毒々しいまでに紅く輝く刺青が顔を出しており、見る者の心を更に締め付ける。
 朱雀も、その姿は見るに耐えなかった。
 自分と彼女を結びつける唯一無二のモノが、あの紅く輝いている刺青である。アレが無ければ、今こうして彼女に仕える事が出来なかっただろう。その点だけであれば、朱雀はあの刺青に感謝していた。
 だがその感謝の意さえ飲み込むほど、今の彼女の姿は痛々ししい。苦しむ彼女の姿を見るたびに、朱雀は刺青の存在を憎み、一時でもその存在に感謝した自分を恨んだ。
 朱雀は、何時かは彼女との繋がりを絶たなければ、と心に決めていた。朱雀がこの結論に至ったのはもう随分前の事だが、その必要性を、その絶対性を改めて確認する。それは他の守護神獣とて同じ事だった。

 守護神獣等は己に言い聞かせる。

”自分達の存在は・・・・彼女にとって猛毒以外の、何者でもないのだ”

 ―――と。

 空の旅は早いもので、もうすぐ目的地に到着する。
 到達地は――――上田城上空。


†・†・†


「Hey gays!! Listen untll I'm finished!!(おいテメェら!!人の話を最後まで聞け!!)藍紫の餓鬼は何処に居るかって訊いてるだけだろがッ!!」
 蒼き竜は吼え、群がる敵兵を刃を返した六爪で薙ぎ払う。突入した直後と比べれば、向かってくる敵兵の数は減っている。が、それでも一向に絶える気配が無い。
 彼等はもう数十分もの間、この場所から動いてはいない。その奇行に違和感を覚えつつも此処を守らんとして、武田の兵達は彼等に立ち向かう――――が、斬りかかる者は全て尽く地に伏してしまってるこの惨状。これで死者が出ていないのだから奇跡としか言いようがない。
 五十人ほど斬られた頃にようやく自分達だけでは彼等を退けないと理解した武田兵一同は、彼等を包囲しつつ入り口を内と外とで硬く閉鎖した。

”敵わぬのならせめて、主人達が来るまで足止めをする”

 それが武田の家臣達が導き出した答えだった。
 武田勢の意図に瞬時に気づいた政宗は、満足げに口の端を吊り上げた笑みを作る。それを傍目で見守る小十郎は「(全く、こんな状況を楽しむ主君が何処に居られるか)」と、呆れつつも愉快と思っていた。『この主君にこの忠臣有り』とはこの事をいうのだろうか。


「止めろ」


 ふと何処からか、透き通った小さな声が響き渡る。本当に小さな声だったのにも関わらず、その場に居た者全ての耳にそれは届いた。
 政宗も周囲の者達と同様に、その声の出所を捜すため辺りを見渡していると――――その時、視界の端に燃えるような紅い”何か”が過ぎった。
 政宗はすぐさま、その紅い”何か”を捕らえた視点に振り向く。と――――、
「これ以上・・・・『世界』を苦しめるな」
 舞い散る紅い羽根に包まれるように、藍紫の髪を持つ子供が・・・・・そこに居た。
 高々十歳前後の外見の子供である筈なのに、その藍紫の髪から覗く鮮烈な真紅の瞳には凄まじいほどの意志の強さと畏怖を感じる。
 政宗はその子供に、暫時魅入っていた。そして同時に何処か哀れんでいた。
 政宗はふと、もし子供の頃の自分が目の前にいる子供と同等の確固たる強さを持っていたならば、きっと今のような強さはなく、今以上に日々に怯えていたのでは。と、何故だか漠然にそう思った。
 などと浸っていると「政宗様、如何されましたか?」小十郎が心配げに小さく声をかける。その声で現実に戻った政宗は「・・・・何でもねぇ。心配すんな」と振り返らずに返事を返す。視線は、目の前の藍紫の子供に向いたままだ。
「Hay boy!!アンタが『』って餓鬼か?」
「!」
 は見ず知らずの男に『』と呼ばれた事に単純に驚いた。彼女がこの世界に舞い戻ったのは、今から丁度五日前の事。そして武田軍(幸村)に拾われるまで人との接触は極力避けていた。故に、名を名乗ったのも幸村が初めてなのである。
 だからこの目の前の男が『』という名を知ってる筈がないのだ。
 が少し動揺した事を確認すると政宗は、改めてこの目の前の子供を『』だと認識する。が、同名という可能性も無くは無いので、自分に言伝を嘆願した女の名を口にしてみる。
「縁 雪(よすがのせつ)って知ってるか?」
「・・・・・・・・・・・・・」
 案の定、は完全に固まり、先程まで身を軽く竦まされるほど感じていた意志の強さが嘘のように感じられなくなった。
 その事に満足したのか、政宗は数分前にも浮かべていた弧を絵描いたような笑みを作る。
「俺は雪からアンタ宛の伝言を頼まれて此処に来た。・・・・・聞きてぇか?」
「で・・・・ん、ごん・・・・・?そんな・・・・ありえない」
「Ah?ンな事俺が知るw『お前、縁の手先か?』
 知るわけが無い。そう続く筈だった言葉が突然途切れ、幼さの残る子供の声が聞こえた。
 政宗が振り返ると、其処には薄緑の長髪と翡翠の瞳を持った小柄な子供が、全身から溢れんばかりの殺気を放ちながら立っていた。
 政宗と小十郎は思わず、ゾクリと身を震わせる。内心、冷や汗をかきながらも「だったら何だってんだ」口は先程と変わらず尊大なものだ。
『そうか』
 子供が不意にニコリ、と幼子特有の無邪気な笑みを浮かべた。その瞬間――――、

『なら死ね』

 政宗と小十郎目掛けて幾千の氷刃が襲い掛かった。





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[反省会]

前回はおかんが出張ってましたが、今回は政宗氏が出張ってます(けど自分はこじゅファン。
相変わらず暗いなぁオイ(呆。
てか武田側の人モブキャラしか出てねぇですよ(汗。

幸「全くでござる(怒」

佐「ホントホント。次の話にも出てこなかったら、お館様がキミのことぶっ飛ばすってさ」

えっ!マジで!?
てかちなみに何処まで?



(最新加筆修正:08.9.9)